★「遺言書」は万能ではない

さて、相続問題は、
いい意味でも、悪い意味でも
資産形成に大きく関わっているということで、

シリーズで
「相続」についてお話ししています。

今回も事例を通して
学んでいきたいと思います。

相続対策と言えば、
すぐに思い浮かぶのは
「遺言書」かもしれません。

たしかに「遺言書」があれば
もめ事を回避する
大きな力になります。

しかし、残念ながら
遺言書があるにもかかわらず、
相続人同士で争いが起きるケースも少なくありません。

今回は、自筆証書遺言に
不備があったことと、

「遺留分侵害額」が
請求されたことについて
事例を通して考えてみます。

★父親の財産は1億円

Aさんは教員で、現在63歳。

専業主婦である奥様と
3人のお子様がいますが、

3人のお子様のうち、
長男は高校教師、
長女はIT企業に就職し
結婚されています。

末の男の子は大学院で
弁護士をめざしてがんばっているところです。

Aさんは、校長をしていましたが、
60歳定年で、一旦退職しました。

しかし、
末の子の学費の支払いや
家のローンがまだ残っていたため、

再雇用の制度を使い、
定年退職後の現在も、
初任者教諭などの巡回指導を行っています。

Aさんには、5歳年下の妹さんがいます。

妹さんにも家族があり、
お二人のお子さんを育て上げ、
就職し独立させています。

ただ、妹さんの夫は、
個人事業主で、以前に抱えた借金が
今も返せず、資金繰りに悩まされることもあるようです。

Aさんと妹さんの
ご両親のうち、お母様は
数年前に他界されていましたが、

85歳になるお父様はまだご健在でした。

お元気でしたが、
風邪をこじらせたことで、
1年前にお亡くなりになったのです。

★財産1億円の相続税は二人合計で770万円

お父様の死後、
資産を調べてみると、

ご自宅が5,000万円。

12世帯の築古木造アパートが
2,500万円。

預貯金が2,500万円。

という内容でした。

総額1億円です。

まず相続税の計算をしてみます。

基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

基礎控除額 =3,000万円 + (600円 × 2人) =  4,200万円

相続財産総額1億円から基礎控除額を差し引きます。

課税遺産総額 = 1億円 - 4,200万円
= 5,800万円

課税遺産総額5,800万円を、
子ども2人それぞれ1/2ずつ
相続するというで仮定して計算すると、

納付すべき相続税額は
お二人合計で約770万円になります。

相続財産が不動産だけなら
支払いに苦慮しますが、

現金も相続財産として2,500万円ほど、
残してくれていますので、
相続税の支払いには困りません。

これでめでたしめでたし、
となれば良かったのですが、

ことはそれでは終わりませんでした。

★すべての相続財産をAさんへ

問題となったのは
「遺言書」です。

お父様のご自宅から
自筆の遺言書が見つかり、

それには
「長男(Aさん)に全財産を相続させる」
と記されていたのです。

当然ですが、
妹さんはかなりショックを受けたようです。

さらに、遺言書には「付言事項」
という項目があり、
家族への思いなどがつづられていることがあり、

その遺言書にも、
お父様から、Aさんに対しての
感謝の言葉がありましたが、

妹さんへの言葉は一言もなかったのです。

このことに対しても、
妹さんは憤慨したようです。

これは推測ですが、
お父様は、
妹さんに財産を相続してしまうと、

妹さんの旦那さんの事業に
全部費やされてしまうのではとの
危惧があったのかもしれません。

Aさんは「遺留分」について
請求があれば
その分は分与する予定でした。

しかし、妹さんは

遺言書自体の
ワープロ書きの「財産目録」に、

本人の証明・押印がない不備に気づき、
遺言書が無効であると主張し、

「この遺言書は無効なので、
相続財産は法定相続分のすべてを
もらいたい」

と言ってきたのです。

ただ、法律上、
遺言上の一部に
不備があったとしても、

その遺言内容すべてが
否定されるわけではありません。

つまり、お父様の
「すべての財産はAに相続する」
という意思まで
無効にすることはできないのです。

★「遺言状」は愛のメッセージであってほしい

紆余曲折ありながらも、
最終的に妹さんは
遺留分を相続することで納得しました。

妹さんの法定相続人としての
相続額は5,000万円ですが、
遺留分はその半分の2,500万円となります。

Aさんはお父様の
預貯金2,500万円を妹さんに
遺留分として分与することと、

妹さんの分の
続税を肩代わりすることで、
この問題を終わらせたのです。

しかし、妹さんは
その後もずっとお父様が
自分に財産を渡さなかった理由が知りたくて、

それが心のひっかかりとして
残り続けているようです。

もし、この先、
親御さんに遺言書を書いてもらう場合は、

遺言書の「付言事項」に、

「なぜこのような分け方にしたのか」

という理由や、

家族への思いなども
書いてほしいとお願いしてください。

そうでないと、
相続人は故人の真意を測りかね、
悲しい思いをさせてしまいます。

遺言書は、
単に財産をだれにあげる
というお金の問題だけでなく、

故人から残された
家族への「愛のメッセージ」
であってもらいたいものです。

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