★配慮が後々のトラブルに
さて、相続問題は、
いい意味でも、悪い意味でも
資産形成に大きく関わっているということで、
シリーズで
「相続」についてお話ししています。
今回も事例を通して
学んでいきたいと思います。
相続財産に不動産が含まれる場合、
遺産分割は一気に複雑になります。
とくに、複数の相続人で不動産を
「共有名義」にしてしまうと、
将来的に新たなトラブルの種
となることが非常に多いです。
今回は、相続における
不動産トラブルの典型例として、
共有名義が引き起こす
問題点に焦点を当て、
具体的な事例を交えて解説します。
Aさんは、福岡県内の
県立高校の教頭先生をされていて、
奥様と中学、高校のお子様が二人いました。
Aさんは長男で、
長女、次男の3兄弟。
それぞれ家庭があり、
持ち家を持っています。
Aさんのお母様は
すでに他界されていますが、
80歳になられるお父様がいました。
そのお父様が85歳でお亡くなりになりました。
お父様の主な遺産は、
評価額4,000万円の実家のみでした。
お父様は遺言書を
残していなかったため、
3人の子どもたちは法定相続分通り、
それぞれ1/3ずつ実家を
共有名義で相続することにしました。
これは、Aさんが兄弟が
仲たがいをしないようにという
配慮だったのですが、
この配慮が後々のトラブルに
つながることは知る由もありませんでした。
★「売却」が本音
実はこの時点で、兄弟はそれぞれ、
この実家の将来についての
思惑があったのです。
たとえば、長男は実家に近いため
将来は自分の子どもに
住まわせようかと考えていました。
長女と次男は遠方に住んでいるため、
将来的には売却して
現金化したいと考えていました。
その後、こうした実家に対する
将来への思惑の違いが
少しずつ不協和音をもたらしていきます。
たとえば、
実家の屋根が老朽化し、
大規模な修繕が必要になった際に、
Aさんが、兄弟に
修繕費用の300万円の折半を呼びかけましたが、
長女と次男は、いずれ売却するのだからと
この折半に応じませんでした。
さらにAさんが、実家に友人を招いて
バーベキューをしたいと話すと、
長女は、その日の電気代や水道代は
Aさんもちにするよう言ってきます。
そうこうしているうちに
こういったやりとりが面倒になった長女が、
「実家を3人で持っているだけでは、
固定資産税や維持費がかかるだけだから
売却してしまおう」
と提案してきました。
それに対して長男は、
「家族の思い出の詰まった
実家を売りたくない。
それに、今は不動産価格が安い」
と実家の売却には反対したのです。
次男は売却に賛成でしたが、
長男に忖度し、
意思表示はしませんでした。
★不動産の「共有名義」はうまくいかない
この長女の主張は
一見、わがままだと思われがちですが、
法律的には合理的だともいえます。
なぜかと言いますと、
共同名義の不動産の場合、
売却、賃貸、大規模な
増改築といった「変更行為」は、
原則として共有者全員の同意が必要です。
たった一人でも反対すれば、実行できません。
小規模な修繕などは、
「管理行為」といって、
共有者の過半数が同意すれば可能ですが、
現実的には、常に意見の調整が必要となります。
さらに、 共有者が亡くなると、
その持ち分はさらにその相続人、
たとえば、孫やその配偶者などに
引き継がれ、共有者が
雪だるま式に増えていく可能性があります。
そうなってくると、
将来的に意思決定が難しくなり、
連絡を取るだけでも一苦労になります。
つまり、不動産の共有名義は、
うまくいかないケースがほとんどなのです。
★「共有物分割請求」で解決
さて、Aさん兄弟の互いの主張は、
その後も数年間、まとまることはなく、
最終的には、
長女は旦那さんからの提案もあり、
兄弟に対して、正式に
「共有物分割請求」を行いました。
まずは、弁護士を交えて、
当事者間の話し合いをすることになり、
そこに至ってやっと長男は
実家の売却を受け入れて、
代金を3人で分割することで合意に至ったのです。
しかし、このことをきっかけに
兄弟は疎遠になっていったのです。
たらればの話になってしまいますが、
事前に以下のようなことを行っていれば、
もめることはなかったかもしれません。
まず、お父様がご健在のときに、
資産について確認し、
その分け方について「遺言書」を書いてもらう。
お父様のご意志が、
相続財産を兄弟で平等に分けてほしい、
という内容で、
そこに不動産がある場合は、
できれば「共有名義」は避けて、
その分け方についても具体的に書いてもらう。
たとえば、実家は売却して現金化する、
とか、
または、代償分割、
だれかが相続し、
他の相続人に現金を支払うとか。
こういったことでしょうか。
もちろん、その遺言内容について
兄弟全員が確認し、
最終的にお父様の意志を尊重することです。
ということで、
相続財産に不動産が含まれる場合、
共有名義は将来的なトラブルに
つながりやすいことを頭に置いていてください。
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