★「主体性」を明確に評価できるのか

さて、今回は
次期学習指導要領についての話題です。

文部科学省は、次期学習指導要領において、
学習評価の観点、
「主体的に学習に取り組む態度」について、

評定(成績)への反映をしない方向で
検討しているという報道が流れてきました。

私は大変いいことだと思っています。

子どもの主体性を引き出すために、
態度も評価の観点とし、
教師の授業改善を促したいという意図はわかります。

また、
学力を知識・技能面だけで
捉えることの矛盾についても重々わかっています。

ですので、実際に教師たちは、
授業中の観察、振り返りや
ノートやワークシートの記述、レポートや発表資料、

作品や制作物、などを通して、
できるだけ印象ではなく、
具体的な評価基準に基づいて評価しようと努力しています。

しかし、現状は、理想と現実の間で
多くの課題を抱えています。

たとえば、評価基準は、
教師によっても、学校間でも異なっているのです。

たとえば、何をもって
生徒の学習姿勢に対して
「主体性がある」と判断するのかは、教師によって解釈が異なります。

積極的に発言する生徒を
主体性が高いと評価する一方で、

静かに深く思考する生徒の
主体性を見落とす可能性もあるでしょう。

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しかしそれ以前に、
教師は魔法使いでもありませんし、
サーカスのようなアクロバットもできません。

授業中に多くの生徒を同時に見ながら、
個々の生徒の細かな行動や
態度の変化を継続的に観察し、記録したり、

生徒の外面的な行動だけでなく、
その背後にある思考や意欲までを理解し評価する。

そんなことできますか?

そもそも、生徒や保護者に対して
「なぜこの評価になったのか」を
明快に説明することなんて無理でしょう。

★「主体的・対話的で深い学び」なんてできるはずがない

私は性格的に
理想を語りたがる人があまり好きではありません。

もちろん理想を掲げた方がいいに決まっています。

たとえば、
「戦争のない平和な世界を実現しよう」
という理想は、非の打ちどころのない、

人間にとって当たり前の願いです。

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しかし、その理想を実現させるに当たっては、
具体的な行動計画にはじまり、
外交を含めた総合的な対応が必要です。

視点は変わりますが、
文科省も理想を語りすぎます。

たとえば、
「主体的・対話的で深い学び」。

これもまた、
非の打ち所がない理想的な授業の姿でしょう。

しかし、30人以上の生徒を抱えるクラスで、
深い対話や深い学びが実現できるはずがありません。

なのに、良くも悪くも、
教師は純粋なくらい真面目な人が多いですので、
できないことをひたすらやろうとして疲弊してしまいます。

私は何度か、
「主体的・対話的で深い学び」を
テーマにした公開授業を参観しました。

いい授業でした。

子どもたち自身が「問い」を立て、
対話を通して、
深い学びを体現していました。

しかし、その授業はある意味、
芸術的なレベルの授業で、
一般化するには程遠いものでした。

野球で例えるなら、
大谷選手のホームランのようなもので、
だれもが実現できるものではありません。

★いまだに「根性論」の教育界

100歩譲って、
「主体的・対話的で深い学び」は、
目指す授業の最高峰であって、

毎日、毎回そんな授業をやって下さい、
ということではないというなら、

せめて、学習指導要領に、
そのことを暗にでも伝えるなりしてほしいのです。

それが難しいなら、せめて解説書あたりにでも、
触れてくれればと思うのです。

たとえば、

「授業では、教師が説明したり、
解説したりする時間をできるだけ減らし、

生徒同士が対話したり、
熟考することに時間を充てること」

とか、

「極力、一斉で行う講義形式の授業を少なくし、
個別最適に構成された授業展開を試みること」

など、

何らかの形でそのことに
触れてほしいのです。

そうしなければ、教師は疲弊してしまいます。

私から言わせると、
「いじめ」「不登校」「自殺防止」なども、
学校でできることではありません。

できるはずのないことをさせて、
できなかった時は学校に責任を負わせる。

こんなことをやっていると、
世界最高峰レベルの日本の教育が、
崩壊してしまいます。

スポーツや芸術分野、
そして一般企業においても
エビデンスに基づいた科学的見見地・合理性が求められ、

それが浸透してきています。

なのに、教育分野では、
いまだに「根性論」や
「非科学的」な施策が見受けられます。

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ぜひ、文部科学省においても
そして、それを支える「識者」「学者」の方々も、

理想と現実のギャップを
埋める視点で政策を策定してもらいたい、
そう思うのです。

そういう意味では、
今回の「態度」の評価を止める議論は
大きな前進だと思う次第です。

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