★一学級に2~3人
近年、小中学校においては、発達の問題を抱える児童生徒が増えてきています。
その中でも、特別支援学級に入級できる子は少人数の中での支援が受けられるのでいいのですが、
そうでない子、例えばADHD(注意欠陥多動性障害)や学習障害(LD)は特別支援学級の対象とはなっていないので、普通学級に在籍することになります。
2022年に文部科学省が行った調査によると、その割合は、小・中学生で8.8%、高校生は2.2%となっています。
小中学校においては、一学級に2~3人ほどいる割合です。
そして、印象としては、その数は今も増え続けています。
その現状に対して、多くの場合、学校の設置者である教育委員会が、学校に支援員を派遣して、学級に在籍する発達障害の児童生徒を支援している状況です。

ただ、その数が年々増加しているため、支援員の数が追いつかない状況があります。
予算の問題もありますし、人手不足も課題となっています。
おそらく、必要な支援員の数は今後も青天井でしょうから、自治体の予算では限界が出てきます。
★大谷選手にはなれない
そういったこともあり、教師に特別支援教育の知識とスキルを高めてもらうことで、事態を打開しようとする動きがあります。
たとえば、発達障害を専門とする職員などを学校に派遣し、療育的な視点から教師をサポートしながら、そのノウハウを学んでもらうといった支援の方法です。
つまり、療育的な知識とスキルを身につけてもらうことで、支援員がいない状況でも対応できるようになってほしい。
そういう主旨なのです。
聞こえはいいのですが、その裏には、青天井となっている支援員の派遣予算を抑えることができる。
そういった目論見が教育委員会にはあるのです。
私は、教育委員会にいた経験もありますので、自治体の予算事情もわかりますし、予算の厳しい中、指導主事たちが予算交渉に尽力していることもわかります。
しかし、この形態の事業はかなり短絡的で、ある種乱暴だと思っています。
なぜかと言いますと、野球で例えるなら、教師たちに大谷選手のようになってほしいと言っているようなものだからです。
打って、投げて、走れるスーパー選手。

日米を見渡しても、大谷選手だけです。
学級を経営しながら、療育の視点で発達障害の子どもたちに対応することも「二刀流」と同じレベルの要求です。
対応できる教師もいます。
しかし、それは一部のスーパーティーチャーのみです。
ほぼ不可能だということです。
そんな矢先、関西近辺で勤務されている先生から相談がありました。
内容の本旨は大きく変えることなく、概略をお話しします。
★こんな支援ならいらない
その先生は現在、小学3年生の担任をしています。
受け持つ児童の中に、発達の課題を持つ女の子がいます。
授業に集中できず、立ち歩いたり、他の生徒とトラブルになることもあります。
さらに、教室を飛び出し、時には校外に出てしまうこともあり命の危険性を感じることもあるのです。
そのため、教育委員会から、療育の専門知識を持つ支援員を派遣していただいていました。
しかし、教育委員会の方針は、担任、そして学校全体でその支援員の療育のスキルを学ぶことが本旨となっているとのこと。
つまり、療育的な知識とスキルを身につけてもらうことで、支援員がいない状況でも対応できるようになってほしい。
そういうことです。
で、どんなことが起きるか、教育関係者なら容易に想像がつくと思います。
この支援事業の目的は教師の知識とスキルの向上ですから、子どもの支援をしてもらうだけではすみません。
授業後に、その支援員の方から、教師としてのその子への対応についてアドバイスをもらうことになるわけです。
一見、療育の視点について学ぶことについてはありがたいことなのですが、そうはならないのがこの世界。
発達障害の専門家から見れば、担任教師の対応はツッコミどころ満載です。
「もっと声かけをしてあげてください」
「もっと褒めてあげてください」
「この子に合った教材を用意してあげてください」
「もっと、この子がお友達と関わることのできる授業展開の工夫をお願いします」
こういった要望が出てくるわけです。
対象児童のみに焦点を当てたアドバイスばかり。
しかも、マンツーマンでしか対応できないことばかりです。
30人を超える児童を学級全体をマネジメントしながら教科を教え、安全管理までしている学級担任の困り感に寄り添ったものではありません。
当然、担任としてのその子への対応スキルが身につくはずがありません。
むしろ、毎回、その支援員のアドバイスを受けるたびに、自己肯定感が下がり、意欲が低下してきていて、もう耐えられない。

求めている支援はシンプルに、この子の安全管理と、少しでも授業に向かってもらうための言葉かけ、励ましだけなのです。
しかし、求められるのは担任という役割を大きく超えるレベル。
無理です。
こんな支援ならいらない。
そんなお話しでした。
★完全ミスマッチ
これは、教育委員会の考える「理想」と、学校現場の「現実」の板挟みに合っている悩ましい教師の叫びとも言えます。
30人以上のお子さんの安全と学びを守りながら、特別な支援が必要な子どもの対応に追われる毎日。
負担が軽減されないどころか、自己肯定感まで下がってしまう状況は、本当に辛いことだと思います。
似たような状況にお悩みの先生方が、日本中にはたくさんいると思います。
マンツーマンで対応する専門家と、学級全体をマネジメントする担任では、役割も視点も、求められるスキルも全く異なります。
支援員の方は、そのお子さん一人に特化したスキルを持っているプロです。
それに対し、先生は、学級全体を動かし、すべての子どもたちに目を行き届かせ、カリキュラムを進めなければなりません。
支援員の方のアドバイスが、先生の抱えている「全体をマネジメントしながらどう支援するか」という課題に応えていないため、アドバイスを活かすことができず、無力感を感じてしまうのは、ごく自然なことです。
それは先生の能力の問題ではなく、支援のあり方と先生のニーズとの間にミスマッチが生じているためです。
ご自身の責任ではありません。
管理職に「もう無理です」と、直球で伝えてください。

そうでなければ、早々、先生自身が病みますよ。
先生は素晴らしい教師です。
どうかご自身を責めないでください。
そうお伝えしました。
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