★優しいが故の我慢

前回は、「面倒見のよすぎる子の悩み」についてお話ししました。

今回も似たようなケースで、物わかりのよすぎる、優しい子で悩む保護者のお話をします。

保護者さんからの相談は、そのお子さんが小学校5年生のときのことでした。

お子さんは5年生の男子児童で、仮にCさんとしておきます。

Cさんも、また、保護者さんからすると、

「私たちが言うのもなんですが」

と前置きしながら、

「とても優しい子なんです」

とのことでした。

さらに、Cさんは野球チームにも所属していて、キャプテンを務めるなど、仲間からの信頼は厚く、大人からも頼られる子どもでもありました。

そんなタイプの子であったために、起こったのが今回の問題です。

まず、運動会の時のこと、Cさんは野球チームに所属していたこともあり、足が速く、リレーではアンカーを走りたかったのです。

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クラスの仲間も当然、Cさんにアンカーになってもらいたいと考えていました。

しかし、Cさんほどではないけれども、そこそこ足の速い別の子がいて、その子がアンカーを走りたいと言い出したのです。

一度言い出すと、なかなか後にひかないタイプのその子の申し出をどうにかしたいと考えた先生は、Cさんにアンカーを譲ってくれないかと持ち出したわけです。

優しいCさんは、快くアンカーを譲ってあげたということです。

次は、自然体験宿泊学習。

宿泊学習では、グループを編成するのですが、ある程度子供たちの自主性に任せることが多いと思います。

この自主性に任せる編成の方法を取った場合、教師としては誰からも声がかからないであろう子がいた場合の配慮を怠らないことが大事になってきます。

そういったことはよくあります。

やはり、その学級でも、どのグループからも誘いがかからず、孤立してしまっている子がいました。

先生はいろいろ調整しましたが、なかなかうまくいきません。

そこで、またCさんに別のグループに移ってもらい、代わりにその子をそのグループに入れてもらえないか頼んだのです。

Cさんは、仲良しの仲間と一緒のグループになれたことで喜んでいたのですが、先生からの申し出を断ることができず、別のグループに移ることを了承したのです。

それでも、コミュニケーション能力の高いCさんですので、別のグループでも楽しく宿泊学習を過ごしたとのことでした。

ただ、Cさんは表情にこそ表れませんでしたし、もしかしたら本人も自分の気持ちを意識化することはできなかったかもしれませんが、おそらく、それらのことに内心、「我慢」してきたのではないかと思います。

なぜなら、その無意識の我慢が、体調に変化をきたすまでになったからです。

それは、6年生の進級に向けた、委員会編成の調整の時のことでした。

Cさんは、放送委員会に入りたかったのです。

放送委員会は人気があるので、オーディションをして人数を絞らなくてはいけません。

Cさんは、そのオーディションに難なく合格するのです。

しかし、選考で落ちてしまった別の子がショックで学校に来れなくなってしまったのです。

悩んだ先生は、またまたCさんに相談するのです。

第二希望には絶対に入れてあげるから、放送委員をその子に譲ってくれないか。

そうお願いしたのです。

さすがのCさんもこれには悩んだようです。

しかし、今回も先生のお願いを聞くことにしたのです。

★体調不全

体調がおかしくなったのはそこからです。

まず、家でお父さんやお母さんが声かけをしても、反応しないことが多くなったのです。

無視しているのかと思って、確認してみると聞こえていない様子なのです。

心配になったご両親は、Cさんを耳鼻科に連れて行きました。

診断結果は、難聴でした。

しかし、難聴になる原因がわかりません。

お医者さんからは、子どもが難聴になる場合は、悩みが原因になっていることが多いので、まずCさんから話を聞いてみてくださいとアドバイスを受けました。

お医者さんのアドバイス通り、ご両親はCさんに何か悩みはないかと聞きます。

しかし、Cさんは思い当たることがないと言うのです。

ご両親もそれ以上追求するのも良くないと思い、しばらく様子を見ることにしました。

すると、その後、Cさんは腰が痛いと言い出したのです。

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Cさんは野球をしていますので、練習のしすぎかと思い、病院に行き診断を受けました。

しかし、今回も特定できるような原因は突き止めることができませんでした。

お医者さんは、子供の腰痛の場合、悩み事やストレスが原因である場合がある。

ですので、Cさんから話を聞いてあげてみてください。

そう、耳鼻科のお医者さんと同じアドバイスを受けたのです。

★優しい子の多い日本の学校

ここから、私は以下のようにアドバイスをしました。

まず、親は事態が深刻であることを理解し、早急に動くこと。

やるべきことは二つ。

まず、愛情さえあれば、「攻撃」にはならないので、Cさんが泣こうがわめこうが、とことん話を聞くこと。

話を聞いて、原因がわかったら、すぐに担任に話をすること。

担任がまだ若く、経験が浅いと思った場合は、学年主任か校長先生に相談すること。

私からのアドバイスを受けて、ご両親はすぐに行動します。

まず、Cさんが尋常ではない深い悩みを抱えているはずだと確信し、前回よりも時間をかけて話を聞いたのです。

Cさんもしっかりしているとはいえ、まだ小学生です。

自分の悩みを悩みだと自覚し、言語化できるほど成熟してはいません。

しかし、ご両親が根気強く、長時間かけて1年間の学校での話を聞いていくと、Cさんが絶えず誰かに何かを譲って、我慢を強いられていたことがわかってきたのです。

Cさんも話しているうちに、辛かったことや、嫌なことを嫌だと言えない、もどかしい自分のダメさを責めるような複雑な心境になり、涙が止まらなくなったと言います。

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その後、ご両親は、すぐに学校に出向き担任と話をしたのです。

まだ若く、経験の浅い担任の先生だったらしく、Cさんがそこまで傷ついていたことに思いは至らなかったと謝罪してきたということです。

そして、Cさんにも配慮の至らなかった先生のことを許してほしい、と心から謝ってくれたそうです。

幸いなことに、その後ほどなくCさんの難聴、腰痛は治ったとのお話でした。

いじめなどの問題がクローズアップされがちですが、優しい子の多い日本の学校においては、こういったことについても配慮が必要です。

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