近年、日本の教育現場では「教師のなり手不足」や「長時間労働」が深刻な社会問題となっています。
その背景にある、現場を疲弊させている要因の一つが、一部の保護者からの過度な要求です。
そして、それに拍車をかけて学校を苦しめているのが、保護者に対する教育委員会の消極的な姿勢です。
今回は、大阪・堺市の事例を基に、学校と教育委員会の歪んだ関係性について考えてみたいと思います。
★大阪・堺市の中学校校長が教育委員会を提訴
2025年12月、大阪府堺市立中学校の現職校長が、「不当な保護者対応を強要され、精神的苦痛を受けた」として、設置者である堺市(教育委員会)を相手取り提訴しています。
東京都「学校のカスハラ対策」公表は誤解?学校は「理不尽な保護者」でも排除できない、"良好な関係づくり"前面に出す訳…結局は現場任せか(東洋経済education×ICT) - Yahoo!ニュース今回のガイドラインは、案も素案も有識者会議に示されたもので、ここでの議論を踏まえて確定する。案が示されたのは11月6日の第news.yahoo.co.jp
事の発端は、生徒指導上のトラブルでした。
保護者からの激しい抗議に対し、市教委は学校側の説明を十分に聞き入れることなく、「謝罪」や「譲歩」を校長に強く促したとされています。
ひどい話だよなあ、なんて思われるかもしれませんが、学校関係者からすると、これって「教育委員会あるある」なんです。
教育委員会が、保護者からの訴えを優先させて、学校に譲歩を促すパターン。
ただ、現実に校長が教育委員会を訴えるという事態は、かなり異例なことです。
異例なことなのですが、私としては「良くやった」と、この校長に言ってあげたい気持ちです。
★不当な保護者からの要求に苦悩する学校
誤解のないように前置きしておきます。
学校現場には、日々膨大な数の連絡が入ります。
そして、その中には「学校に対する要望・苦情」もあります。
しかし、その多くは正当な相談や要望です。
ただ、わずかですが、中には度を越したものも存在します。
例えば、
・長時間にわたる電話
・一方的な謝罪要求

・特定の教職員の解雇や配置換えの強要
・SNSへの誹謗中傷
・長時間の居座り、職員の拘束
これらはもはや「相談・要望」の域を超えています。
ビジネスの世界で言うところの「カスタマーハラスメント(カスハラ)」に該当します。
ただ、ビジネスの世界では、
「もううちの商品を買ってもらわなくても結構です」
「もう来ないでください」
と顧客を排除することも可能です。
しかし、公立学校は一方的に保護者を排除することはできません。
なぜなら、公教育だからです。
相手が公教育の対象である生徒の保護者である以上、その関係性をすべて断ち切ることはできません。
そこが、学校の難しい点です。
★保護者との関係性を崩さず穏便に解決したい教育委員会
そこで、学校の設置者である教育委員会が、保護者への盾になってくれれば助かるのですが、大抵の場合そうにはなりません。
むしろ、学校に矛先を向けてきます。

多くの教育委員会は、訴訟に発展することや、あるいはマスコミからたたかれることを恐れるからです。
そのため、「穏便に済ませたい」というバイアスが働くわけです。
ですので、学校に対して、
「とりあえず不手際の部分については謝ってください」
「相手に寄り添って対応して」
などといった、ことなかれ的な指示を出してきます。
学校はすでにそういったことをしていて、それ以上の要求をされているにもかかわらずです。
こうした学校と教育委員会の一貫性のなさが、結果として保護者の不当要求をエスカレートさせます。
そして、学校現場を孤立無援の状態に追い込んでいくのです。
★学校は教育委員会の子会社なのか
本来、教育委員会は学校を支え、適切な教育環境を担保するための「サポート組織」であるべきです。
しかし、現在のパワーバランスは、あたかも「親会社(教委)と子会社(学校)」のようになってしまっています。
本社の顔色を伺い、クレーム処理に追われる子会社の現場社員。
そんな構図が教育の場でも常態化しているのです。
教職員が「自分たちは守られていない」と感じると、やる気がなくなるのは当然です。
このような状況では、今後も教員不足は加速していくでしょう。
★東京都の「学校のカスハラ対策」は打開策となるか
しかし、中には動き出した行政もあります。
東京都教育委員会です。
全国に先駆けて「学校におけるカスタマーハラスメント対策方針」を策定しました。
東京都教委、保護者の「カスハラ」例示 担任変更の不当要求など - 日本経済新聞東京都教育委員会は2日、教員に過剰な要求をする保護者への対応指針案を有識者会議に提示した。教員へのカスタマーハラスメント(www.nikkei.com
この方針の画期的な点は、「何がカスハラに該当するか」を明確に定義したことです。
そして、悪質な場合には組織として対応(警察への相談や弁護士の活用)することを明文化したことです。
「一対一での対応をさせない」
「不当な要求には組織としてNOと言う」

「被害を受けた教職員をケアする」
こうしたマニュアルが整備されることは、現場にとって大きな後ろ盾となります。
しかし、大切なのは「指針を作ること」だけではありません。
大切なことは、実際に問題が起きた時に、教育委員会がどれだけ本気で現場を守り抜くかという「覚悟」です。
私はそう思っています。
★さらなる解決策
私は、不当な要求から学校を守る解決策として、以下のような対応も必要だと考えています。
・初期段階から弁護士や社会福祉士、警察OBなどの外部専門家が介入できる仕組みを常設化
・クレーム対応の窓口を教育委員会が一本化し、教師を授業や生徒指導に専念させる環境の整備

子供たちの教育環境を守るためには、まず教師が安心して教壇に立てる環境を守らなければなりません。
堺市の訴訟は、日本の教育システムが抱える「限界」を知らせる意味で、校長先生の功績だと私は思っています。
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