★「調整授業時数制度」とは
次期学習指導要領で導入が予定されている「調整授業時数制度」とはどのような制度なのでしょうか。
まず、日本の学校では、小学校高学年あたりから、高校まで年間およそ1000時間授業があるということを頭においてください。
この授業時数は世界的基準からすると、平均的です。
なので、総授業時数は維持されます。
その総授業時数を各教科に割り当てています。
そして、各教科に割り当てられた授業時数は、自治体や学校が勝手に変えられるものではありませんでした。
かなりガッチガチでした。
どれくらいガチガチだったのか。
例えば、学校が国語の時数を年間10時間減らして、その時間を総合的な学習に移行させたいとします。
その場合、まず文科省に「特例校指定」の申請をしなければなりません。

つまり、
「国語の時数を総合的な授業に移行することが許されている特別な学校である」
という許可証をもらうのです。
でも、文科省は簡単には認めません。
例えば、
「なぜ国語の時数を減らすのですか」
「現在の総合的な学習の時数で対応できない理由は」
「減少した国語10時間の内容をどのように補うのか」
こういった問いに対する説得力のある説明と資料が示せなければ許可はおりません。
この厳しい時数維持の岩盤を砕くのが「調整授業時数制度」です。
この制度が導入されれば、特例申請なしで各教科の授業時数の変更が可能になります。
各教科の時数を学校が決められるのです。
もちろん、上限はあります。
各教科の授業時数の1割程度。
減らせない教科もあります。
例えば、道徳、特別活動など週1コマ程度の少ない教科です。
これは当然でしょう。
最低限の時数を確保しておくべきです。
しかし、これまで厳格だった「授業時数厳守」の壁がかなり下がったのです。
教育版「規制緩和」といっていいでしょう。
★「調整授業時数制度」で何がどう変わるのか
それで、この規制緩和によって、どのようなことができるのか。
いくつか事例を示してみます。
まず、学力定着と個に応じた学習です。
自校の児童生徒の学習課題に合わせて、特定の既存教科へ時数を傾斜配分する活用方法です。
例えば、算数・数学が全国平均をかなり下回っている。
そんな学校であれば、算数・数学のコマ数を増やします。
そのうえで、算数・数学の授業方法も自学や個別指導などを取り入れるなどの授業改善を図っていきます。
また、自学自習を容易に進められる力を育むために、特にタブレット活用に特化した発展的学習に時間を充てるなどです。
あと、どちらかといえば、基礎学力が身についている児童生徒が多い学校。
そういった学校は、ぜひ探究的な要素を生かした学習を進めてもらいたい。
例えば、地域連携プログラム。
地域の特性や課題を洗い出し、商品開発をしたり、地域課題の解決に向けた提案をしたりする学習です。

「思い」だけが先行しないよう、理科・数学・情報などを横断し客観データ分析なども同時に行っていきます。
地元の企業や自治体、大学との連携などにより、キャリア教育を含めた総合的な学習にもつながります。
まさに地域に開かれた教育課程です。
探究に取り組むことで、相乗効果により、基礎学力もさらに向上します。
知識がない探究は、単なる「思いつき」や「浅い調べ学習」に終わってしまいます。
また、探究が伴わない知識やスキルは、テストが終われば忘れてしまう短期記憶にとどまってしまいます。
単なる暗記から「中核的な概念(キーコンセプト)」を軸とした単元の精選・構造化とセットで運用することが求められます。
★校内研修・授業改善のための「教員の余白(研修時間)」
この「調整授業時数制度」のもう一つの「売り」は、授業時数を減らし、その時間を「教員の研修時間」に充てることができることです。

カリキュラムの過密化を解消し、教員が授業準備や研修にじっくり取り組む余白を取り戻すことをめざしています。
例えば、標準授業時数の最大1割程度削減し、この時間を学校全体や学年での合同研修に充てることができます。
または、毎週水曜日を45分、40分授業に短縮し、放課後に全校一斉の校内研修・教材研究の時間に固定するといった日課編成も可能になります。
★日本の未来を拓く教育のあり方を目指して
今回ご紹介した「調整授業時数制度」をはじめ、次期学習指導要領の改訂に向けた動きは、かなりドラスティックです。
「日本の教育の根幹を現代に合わせてアップデートする」という文部科学省の強い決意が感じられます。
学校現場が「これまで通り」にとらわれず、柔軟にチャレンジできる環境をつくること。
「ガチガチだった規制」を解き放ち、学校現場への信頼と委ねへと大きく舵を切ろうとしています。
もちろん、これらの取り組みは現在も中央教育審議会などで議論が重ねられている最中です。
まだ確定した最終決定ではありません。
しかし、「学校独自の授業時数の調整」が可能になれば、子どもたちの学びの質が高まり、教員の情熱とゆとりが取り戻されることは間違いありません。
制度の完成に向けて今後の議論のゆくえから目が離せません。
調整授業時数制度
https://www.mext.go.jp/content/20260203-mxt_kyoiku01-000046830_02.pdf
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