★資産形成、相続対策にはパートナーが必要
これまで私は、「親子で進める資産形成」「相続対策」という視点から、さまざまな制度や仕組みがあることをご紹介してきました。
例えば、暦年贈与、相続時精算課税制度、家族信託、生命保険の活用、プライベートカンパニー(資産管理会社)、養子縁組などです。
しかし、ここで一つ、ぜひ強調しておきたいことがあります。
それは、
「どれか一つの制度だけで、資産形成や相続対策が進められるわけではない」
ということです。
本当に大切なのは、それぞれの制度を組み合わせながら、自分たち家族に合ったオーダーメイドな仕組みをつくることです。
オーダーメイドな仕組みづくり?
そんなこと素人ができるの?
そう思いますよね。
確かに、何十年後を見越して、自分の家族に合ったオーダーメイドの仕組みを構築していくためには、かなり高度な知識とスキルが必要です。
おそらく個人では難しいと思います。
確実に言えることは、
「パートナーが必要」
だということです。

パートナーとは専門家です。
例えば、税金、贈与税、相続税の計算等については税理士。
家族信託、遺言書作成については司法書士、行政書士。
土地やアパート経営などの不動産の活用については、不動産会社。
ライフプランを踏まえた資産形成や保険、金融商品の運用の全体設計についてはファイナンシャル・プランナー(FP)。
ケースによっては、弁護士に頼らなければならないこともあります。
要は、個人で進めることは難しい。
さらに言えば、一分野の専門家だけですべてをカバーすることも難しいのです。
★4つの確認
ではどうすればいいのか。
一人の専門家だけではなく、複数の専門家が連携する「専門家チーム」を作るのです。
ただ、すぐに専門家チームを作るという作業から始めてしまうと効率がよくありません。
可能な限り、下記のことについて整理しておくことをお勧めします。
①財産目録を作る
預金、株式・投資信託、保険、不動産、借入金を一覧化しておきます。
②老後に必要な資金を概算しておく
子や孫のためだけではなく、ご自分たちの今後の生活についても必要額を概算しておいてください。
③相続税と遺産分割を試算する
現時点で、どれくらいの相続税がかかるのかを試算しておきます。
また、資産をどのように分割し引き継いでいくのか、分割案を立てておきます。
④家族の希望を整理する
分割案について家族に提示すると同時に、家族の希望を整理しておいてください。
これはあくまで一例ですが、大方、このような確認が必要になります。
では、具体的にどのような流れで、これらの内容を整理していけばいいのか。
★あるご家庭の事例
あるご家庭をモデルに具体的な流れをイメージしてみましょう。
佐藤さん(60歳)は、この春、公立学校の校長として、役職定年を迎え、そのまま普通退職しました。
退職金とこれまでの貯蓄を合わせて約5,000万円の金融資産があります。
自宅は住宅ローンを完済しており、時価約3,000万円。
さらに、父親から相続した賃貸アパートが1棟あり、年間約250万円の家賃収入があります。
家族は妻(58歳)、長男(33歳)、長女(30歳)の4人。
長男は会社員で結婚し、子どもが2人。
長女も会社員で、近いうちに結婚を予定しています。
佐藤さんは、退職を機に、
「これから30年間で資産を増やし、それを子どもたちへ円滑に引き継ぎたい」
と考えるようになりました。
そこで税理士へ相談しようと考えましたが、その前に家族で次の4つを整理することにしました。
①財産目録を作る
まず取り組んだのは、自分たちがどれだけの資産を持っているのかを一覧にすることでした。
・預貯金 2,500万円
・投資信託 2,500万円
・自宅 3,000万円
・賃貸アパート 5,000万円
・生命保険 1,500万円
さらに、
・どこの銀行に口座があるのか
・証券会社はどこか
・保険証券はどこに保管しているか
これらを一覧表にまとめました。
②老後資金を確保する
次に考えたのは、「いくら子どもに残すか」ではなく、「自分たちが安心して暮らすためには、いくら必要か」でした。
年金だけでは毎月約5万円不足する見込みです。
90歳まで夫婦で生活すると仮定すると、およそ2,000万円程度は生活資金として確保したいと考えました。
③相続税と遺産分割を試算する
資産を一覧にしてみると、現時点の相続財産は約1億2,000万円になる見込みです。
当然ながら相続税が発生します。
今後の資産運用によっては、お子さんたちにかかる相続税がかなりの額になるであろうことも推測できます。
また、佐藤さんはお子さん二人に「財産は半分ずつ」公平に分けるべきだと考えていました。
しかし、今後の資産形成によっては、平等に分けることが難しい状況も見えてきました。
④家族の希望を整理する
ある休日、佐藤さん夫妻は子どもたちを自宅に招きました。
相続の話を切り出すのは少し勇気がいりましたが、
「将来、みんなが困らないように、今のうちに話しておきたい。」
そう伝えると、子どもたちも真剣に耳を傾けてくれました。
長男は、
「アパート経営には興味がある。」
長女は、
「私は不動産より金融資産の方が管理しやすい。」
という考えでした。
さらに、
「もし将来、お父さんやお母さんが認知症になったらどうするの?」
という話題にもなり、家族信託や任意後見制度について調べるきっかけにもなりました。
いかがでしょうか。
これくらいの段階までこれたら、専門家への相談がスムーズに進められます。
次回は、その後のチーム作りについて、具体的な流れを解説していきます。
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